馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

謎の「反細菌戦」キャンペーンと北朝鮮

www3.nhk.or.jp

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 夜にテレビニュースを見ていたら、安倍首相がインドの首相と会談したらしく、北朝鮮の核保有を共同声明で、「最大限圧力をかける」と非難していた。

 これは、ザ・ニュースペーパーのコントだったのか? インドこそ、北朝鮮と並んで、NPT(核兵器不拡散条約)を守っていない核保有国なのだが。

 NPTでは、国連安保理常任理事国と同じ5か国だけ核保有が認められているが、このほかにもアメリカにとってのイスラエルとか、核保有国でも「問題にされていない」例は数多い。要は大国様のお気に召すかどうかだ。

 北朝鮮がなぜ核を持ちたがるか、という理由はわかりやすい。朝鮮戦争という過去の歴史がある。

 朝鮮戦争で原爆が使用された可能性は、一般的に知られているよりも深刻だった。マッカーサーが原爆の使用を唱え、トルーマンに解任されたことは有名だが、次の新しいアメリカ大統領になったアイゼンハワーは、1953年に、やはり核兵器の使用を検討していた。その年のうちに停戦協定が成立して、結局使われることはなかったが、荒井氏は、「その記憶は、今日の核問題をめぐる北朝鮮の態度にも投影している」と書く。(荒井信一「空爆の歴史」、190~191ページ)

 もっとも、朝鮮戦争の歴史は、北朝鮮や中国の秘密主義で史料が公開されておらず、まだ謎が多い。1953年に中国共産党は、「反細菌戦」キャンペーンを始めた。アメリカが非人道的にも、航空機から大量の病原菌を持った昆虫をばらまいている、というのだ。中国の首脳部が本当に「細菌戦をされている」と思っていた証拠はあるようだが、アメリカ側に証拠はない。(和田春樹「朝鮮戦争全史」、第6章。)

 未解決の謎をはらみつつ、北朝鮮の安全保障イデオロギーが、「奴ら(アメリカ)はなんでもやるから、こちらもなんでもやらなければならない」と呪われたことは、容易に想像できる。