写真は日中戦争の「真実」を語っているのか?

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 毎日新聞の記事によると、「大部分は、中国での旧日本軍進駐を人々が歓迎する場面とみられる写真を載せた絵はがきに抗議文をあしらった同一のスタイルだった」「さらに、差出人の住所や氏名を明記し抗議文をワープロ印刷したはがきが大量に届き始めた。やはり大部分が同一の文面で、組織的な抗議活動をうかがわせた」という。

 ツイッターでも、南京事件への言及を眺めると、否定論にたいてい「日本軍を歓迎する中国の民衆」の写真が付いている。誰かが「こういう形式で書こう。投稿しよう」と扇動しているとか?

 例の「歓迎する中国人」の写真が、南京のものかどうかは置いといて、歓迎されるような日本軍も、いるにはいただろう。どの部隊も略奪や暴行をやっていたわけではなく、中には規律正しい部隊もいた。南京事件の時でさえ、南京攻略戦に参加したすべての部隊が虐殺・略奪をやったわけではなかった。

 南京事件に対する、半藤一利氏(「文藝春秋」元編集長)の概観。「一概には言えませんが、南京を攻めるときに南と東と揚子江沿いとの三方から攻めるわけです。南から攻めていった部隊は虐殺をしていません。規律を守って明らかに戦争を堂々と戦っています。ところが、揚子江沿いの部隊と東から行った部隊は、かなり虐殺をしたんです」(半藤一利、保坂正康、井上亮「東京裁判を読む」文庫版、249ページ。)

 世界が非難したイラク戦争で、フセイン政権が倒されたときも、市民は街頭にあらわれて歓迎していた。本当にフセイン政権が憎かった人もいるし、新しい支配者であるアメリカ軍に合わせただけの人もいるだろう。とりあえず歓迎しといたほうが、扱いはよくなる。それは弱小国の人の知恵である。

 日中戦争においても、大多数の中国人がおとなしく従っていても、一部の中国人がゲリラ活動をしていれば戦争は続くわけだし、日本軍が抗日ゲリラに手を焼けば、「三光作戦」といわれた無人化政策の理由にもなる。

 20世紀を代表する写真家ロバート・キャパにも、スペイン内戦を映した「崩れ落ちる兵士」をめぐって、真贋論争がある。写真とはそのようなものだ。

 つまり、例の写真は何を語っているのか。ほんの一部しか語っていない。日中戦争という巨大な現象に対し、ファインダーの枠におさまる断片に、そうそう都合のよい「真実」があるのか。

 

「東京裁判」を読む (日経ビジネス人文庫)

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