失業率が低い、という「日本の奇跡」を問い直す

 昔、途中まで読んでそのままにしていた生田武志「<野宿者襲撃>論」(2005年の本)を再読している。
 著者は長年ホームレスの支援活動をしていた人で、「大阪府立大学の研究によれば、餓死や凍死、また治療を受ければ治る病気などによって路上死する野宿者が、大阪市内で2000年に年間213人とされています」(206ページ)「この数字はとても控えめな計算で、現実にはもっと多いと考えられるということでした」(207ページ)という紹介に続けて、「ぼく自身、この20年近くのあいだに、何度も死者の第一発見者になりました」(同ページ)と語る。
 こういった経験の持つ言葉の重みは、大阪維新の会のような、トップダウン型「改革」論議を問い直すものだ(彼らはどれだけ現場の状況を把握しているのか)。
 ちなみに、国境なき医師団によると、「この大阪の野宿者のデータと海外の難民キャンプのデータを比較して、「日本の野宿者の置かれている医療状況は、難民キャンプのそれのかなり悪い方に相当する」と指摘している」(26ページ。207ページにも。)
 今は人手不足で失業率も下がって、好景気といわれているが、根本的な問題はおそらく変わってないだろう。

 ヨーロッパ諸国に比べると、日本の失業率は一貫して低い水準で推移して、それは「奇跡」とも言われたらしい。しかし、誇れる数字にも暗黒面がないだろうか。私が考えるに、日本の失業率の低さは、一方で「働いて当たり前」という意識を作り出し、失業者を「怠けている」「努力しろ」と見下す空気を作ってきた。

 結果、失業対策(無駄な公共事業であろうと、とにかく仕事は作っている)や就労支援はまぁまぁ充実しているが、今野宿をしている人への福祉が貧弱な社会になったのではないか。