新書限定。
岩田靖夫「ヨーロッパ思想入門」(岩波ジュニア新書)
丸山真男「日本の思想」(岩波新書)
森嶋通夫「思想としての近代経済学」(岩波新書)
見田宗介「現代社会の理論」(岩波新書)
渓内謙「現代史を学ぶ」(岩波新書)
宮崎市定「科挙」(中公新書)
安達正勝「物語 フランス革命」 (中公新書)
小泉義之「デカルト 哲学のすすめ」(講談社現代新書)
松戸清裕「ソ連史」(ちくま新書)
加藤徹「貝と羊の中国人」 (新潮新書)
選出の基準は、まずテーマが広いこと。何しろ新書だけに、狭いテーマならいい本がありすぎる。というわけで、秦郁彦「南京事件」や、日暮吉延「東京裁判」は落とした。(「外務省革新派」のように、評価は高いけれど食指が動かず、読み進めていない本もあるし・・・。)
次に、史料や説が古くなっていて、今だったら他にいい本がある場合も、落とした。林健太郎「ワイマル共和国」は名著だけれど、30年以上たって部分的に時代遅れなのは覆い難い。寺田隆信「物語 中国の歴史」も、個人的に愛着があるけれど、説が古い。若林正丈「台湾」は、2001年の本なので、陳水扁政権誕生で終わっている。
結果はやはり、新書界の四天王、岩波、中公、ちくま、講談社が強い。そんな中で、新潮新書が食い込んでいた。
本の紹介。「デカルト 哲学のすすめ」は、デカルト入門としては使えないが、著者独特のパトスにあふれた哲学が堪能できる。「思想の正しい解説」よりも、文章の面白いものを入れた。
「科挙」「物語フランス革命」は、タイプは違うけれど、著者の目配りが効いていろんな話題に広がるので、飽きがこない。
「現代史を学ぶ」は、著者がE・H・カーの弟子で、その歴史哲学を受け継ぎながら、カーの名著「歴史とは何か」よりもわかりやすい。
「ヨーロッパ思想入門」は、教科書的な要約をしている一方で、著者独自の解釈が強く入っていたりする。とはいえ、抜群に面白い。
「ソ連史」を読むと、われわれは旧ソ連について分かった気になっているだけで、意外と知らないのかもしれない、という気がする。近い時代ほど、しっかりした本を調べたわけでもないのに、「もう知ってるよ」と思ってないだろうか。
アメリカのワシントン、ロシアのモスクワ(昔はサンクトペテルブルク)、中国の北京、大きい国は首都が端っこにある。なんで? 答えは「貝と羊の中国人」で。中国本は数が多すぎて、当たり外れが激しい。そのなかでこれは、切り口の面白さで光る。
伊東光晴「ケインズ」と甲乙つけがたいのだが、より、門外漢にとっても興味深いエピソードが豊富な「思想としての近代経済学」にした。リカード、マルクス、シュンペーター、ケインズ。並み居る経済学の巨人たちの中で、日本人から唯一高田保馬が選ばれている。この章は著者の回想も交えて書かれており、特に素晴らしい。「経済学って、GDPやら株価やら…、つまらなさそう」というイメージを覆す好著。