馬と鹿と野と郎

「世人は欺かれることを欲す」(ペトロニウス)

今の段階で言っても

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 小4児童への暴言・暴行事件。「ここまでいわれる児童側にも何か問題があったのでは」と、教師の気持ちを「そんたく」する無駄な深読み好きも、一部にいるようで。
 どうせ断片的な事実しかわからない今の段階で、あれこれ余計な想像しても意味ないでしょ。ネタがないワイドショーのコメンテーターみたいだ。

「不死身の杉元」とは。「ゴールデンカムイ」3巻まで。

 野田サトル 「ゴールデンカムイ」を、3巻まで読んだ。
 主人公の杉本佐一は、ピンチになると日露戦争で付いたあだ名、「不死身」を連呼する。
「俺は不死身の杉元だ」
 アシリパは3巻の18話で(断ち切りが多くて、ページ数がわからない)、「あいつの強さは死の恐怖に支配されない心だ」といっている。
 しかし、時々差し込まれる杉元の回想を見ると、本来繊細な人間だった杉元が、生き残るため自分に言い聞かせているような印象がある。(年下の少女アシリパを、りちぎに「さん」づけで呼んでいたり、杉元は意外に紳士的な男だ。)
 この作品、見た目はいかにも青年漫画的で、荒々しいが、垣間見える登場人物の弱さやもろさが、「痛快サバイバル」に終わらない奥行きを持っている。
 個人的考えだが、女性は「私分かるわ、この人本当は優しい人なの」というキャラクターが好きなので、もっと知名度が上がれば、女性人気も出そう。

野田サトル「ゴールデンカムイ」1巻を読む。

 時代は明治後期。かつてゴールドラッシュに沸いた北海道で、超絶やばい奴らもゴールドラッシュ!!

 野田サトルゴールデンカムイ」1巻を読む。ストーリーの面白さは前に書いたから、今度は絵について。思うに、絵がキレイでも、「軽く巨人を吹っ飛ばす」「棒立ちで敵を真っ二つにする」といった記号的表現に頼ってしまう人はいて、それじゃあ漫画は面白くないじゃない。
  絵のハードルが上がりまくった現在、野田サトル氏の絵は、うまいといえないかもしれない(特に少女アシリパのデッサンは雑なような・・・)。が、見せ方がいい。

 たとえば、尾形上等兵という男が、顔を表す対面シーン。(いつものことだが、スキャンする際に端が切れた。左端にもセリフがある。)

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 腰を深く落とした、プロっぽいファイティングスタイルと、不気味な無表情。一目見て「こいつ、できるな・・・」と感じさせてくれます。

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https://togetter.com/li/1069960

安倍離れ? 共存する矛盾

inunohibi.hatenablog.com

 そうそう、「マスコミの偏向報道」と並んで多いのが、「(時事通信の)世論調査なんて信用できない」という書き込み。
 確かに世論調査をうのみにしてはいけない。しかし、森友問題の時、安倍政権の支持率が下がらなかったのを、「マスコミの偏向報道に振り回されなくなった」といっていたツイッタラーや、まとめサイトの書き込みは多かった。
 最近、支持率がつづけて下がったのを、「あてにならない」とか「マスコミの偏向報道」というのは、これと矛盾する。いったい世間は振り回されなくなったのか、振り回されているのか。
 当時そういってた人たちが、誰だったか忘れたが(さすがに執念深くて記憶力のいい私でも、覚えて吊し上げる気はない)、秦郁彦陰謀史観」が指摘する、陰謀論の共存と近い構図がある。
 陰謀論者は、あるものはユダヤの陰謀と言い、あるものはコミンテルンと言い、あるものはCIAという。めいめい勝手にこの世界を支配する黒幕を名指しし、一体どれが世界支配の本家で源流になるのか、奇妙に陰謀論者どうし争うことはない、らしい。
 ネット右翼同士も、2ちゃんねるなどで微妙な論理の違いを見せることはあるが、そういう「ズレ」は、まとめサイトが普及してから“ノイズ”としてかき消されるようになった。まとめサイトというのは、全体として、マスコミは信用ならないとか、民進党が何よりクソだというムードを作って、後はアフィリエイトを稼げばいいだけなんである。

 

陰謀史観 (新潮新書)

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「黒」ではない。しかし、安倍内閣の「グレー」がどんどんと濃くなっていく。

news.nicovideo.jp

 安倍内閣の支持率が急落している。

 一部のネット右翼は、「マスコミの偏向報道のせいだ」と、責任をマスコミになすり付けてごまかそうとしている。確かにテレビや新聞を見れば、連日安倍政権のスキャンダルを取り上げているが、それは次々と新しい疑惑が持ち上がっているからだ。
 単発のスキャンダルだったら、民進党蓮舫代表の二重国籍もあった(あれは結局問題なかったようだが)。
 今年の冬、一連の森友問題のときは、まだ安倍政権の支持率は落ちていなかった。籠池理事長というエキセントリックな個人の問題にされて、尻すぼみで終わるかと思ったら、加計学園で再び「そんたく」が取りざたされた。(「そんたく」は今年の流行語大賞間違いなしだろう。)
 どれもまだ、決定的証拠はない。しかしこうも灰色の疑惑が続けば、「どれかは黒なんじゃないか」とか、「黒にならないギリギリのところで悪さをしているようだ」とか、イメージは悪くなる。
 「内閣を支持しない理由(複数回答)でも、「首相を信頼できない」が前月比8.7ポイント増の27.5%と急増」というのが、一般市民の不信を率直に表している。
 「決定的証拠がない」から推定無罪で白である、というのが刑事裁判の世界では原則だが、ネット右翼がそうやって、必死で安倍内閣を「白」にしている間(左翼は逆に、韓国や総連を必死で白にする傾向があるが)、「グレー」がどんどんと濃くなっている。

國分功一郎氏インタビュー

bunshun.jp

bunshun.jp

 國分功一郎氏の新刊、「中動態の世界 意志と責任の考古学」の話など。本のタイトルだけ見たら確実にスルーしていたと思うが、身近なテーマを絡める語り口で面白かった。
 自分の「自由意志」か、「強制された」のか、その二項対立では、こぼれ落ちてしまう問題群。乱暴な分類(決めつけ)に抗いたい気持ち、というのは、哲学と全く無縁な日常でも、いろんな人にモヤモヤとあるものだろう。